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『安倍晋三が目指した世界日本人に託した未来』 感想

安倍晋三が目指した世界日本人に託した未来

渡邊哲也

 

中東と国際社会を繋ぐハブ

安倍総理の外交戦略を理解するうえで押さえておかなければならない核となる構想が、2006年第一次安倍政権の外務大臣麻生太郎氏が提唱した「自由と繁栄の弧」である。

この「自由と繁栄の弧」に基づいて、第一次安倍政権下の日本は中東と国際社会のハブになっている。

第一次安倍政権下で外務大臣になった麻生太郎氏のもと、2007年1月に日本はイスラエルと「戦略対話のための覚書」に調印。そして同年3月東京で日本、イスラエルパレスチナ、ヨルダンの閣僚級4者による、パレスチナの経済的自立を支援する「平和と繁栄の回廊」構想の発足会合が開かれた。

 

中東

U A E(アラブ首長国連邦)は7つの首長国からなる連邦国家である。その1つアブダビ首長国の「A D N O C」は、同国の最高石油評議会のもと実質的に石油行政を担当する国営石油会社である。

首都にある「A D N O C」本社ビルに、安倍総理の顔と日本の国旗が投影された。その追悼動画も公開されている。

ロシアによるウクライナ侵攻でも日本の石油、ガスの輸入が維持でき、エネルギー安全保障が保たれているのは、安倍総理の功績ともいえる。

 

インド

2007年、安倍総理が「自由と繁栄の弧」をさらに発展させ「二つの海の交わり」と題した講演をインド議会で行い、自由で繁栄するインド太平洋構想を提唱。広大な範囲での価値観外交を、インドを中心としたものに置き換える。

それまで世界中のどの国もインドを重要視していなかった。

 

民主党の愚策

2009年9月、悪夢の民主党政権が始まった。民主党政権の愚策によって日本は3方向からの圧迫を受けることになる。第一の脅威は中国である。

2010年9月7日沖縄県尖閣諸島付近で操業中であった中国漁船が、警戒する海上保安庁の船に体当たりをして破損させた。海上保安庁は攻撃してきた船長を逮捕する。当時の官房長官仙谷由人氏が、拘束した船長も無罪で放免。すでに南シナ海へ進出し始めていた中国は、これで増長。台湾・日本列島南側への圧力をますます強化させた。

第二の脅威が朝鮮半島である。

民主党政権発足時の韓国の大統領が李明博氏である。鳩山由紀夫氏は、日韓の歴史問題を直視するという姿勢を示し、反日手法をアシストする。

2012年8月10日、李明博氏は竹島に上陸。野田佳彦政権は事実上、何もしなかった。北朝鮮と連動して、韓国が反日に傾くのである。地政学的に日本列島に対する朝鮮半島全体の脅威値が上がった。

第三の脅威がロシアである。

2012年12月26日に発足した第二次安倍政権である。喫緊の課題は日本列島の地政学的リスクを下げることである。

しかし、日本の防衛リソースでは3方向の脅威に対応できなかった。

そこで安倍総理はロシアのプーチン大統領と友好関係を結ぶことで、日本海北方方面のロシアの圧力を下げようとした。2019年には日露外務・防衛閣僚協議の「2+2」までこぎつける。

安倍総理は、外交によって北方方面の脅威は減退させ、余剰した防衛リソースを日本海の中盤から南方方面へと振り分けた。例えば事実上の空母である「いずも」「かが」を建造し、「16式機動戦闘車」を開発、配備した。

 

アメリカの外交戦略

第一次政権以来、安倍総理が注目していたのは太平洋と大西洋を繋ぐ海域、インド太平洋である。このエリアを地政学の重要拠点としてF O I P(Free and Open Indo-Pacific Strategy)の略で自由で開かれたインド太平洋という戦略を発案する。

安倍総理のF O I P発案以前、アメリカの安全保障戦略にはインド太平洋という言葉は存在しない。アメリカはインド洋も太平洋の一部と捉えていた。アメリカ海軍は9つの統合軍を持っているが、ハワイを拠点にした部隊はアメリカ太平洋軍(U S P A C O M)と呼ばれていた。

2018年5月30日、米海軍はU S P A C O Mをアメリカインド太平洋軍へと名称を変更した。

安倍総理はT P P11を通じてA S E A N諸国を連携させようとした。インド太平洋を多層化した経済安全保障同盟によって覆うという考え方である。

実際2021年9月15日にアメリカ、イギリス、オーストラリアは軍事同盟A U K U Sを結成し、インド太平洋を取り囲む形になっている。

 

戦後を脱却する日本

安倍総理は日韓関係の精算も行った。2015年の慰安婦問題日韓合意によって、慰安婦問題で恒久的かつ不可逆な解決を勝ち取った。

もちろん、その後も韓国政府は何度か慰安婦を再問題化しようと試みた。だが慰安婦合意はアメリカを仲介者とした国際条約である。締結した以上、再問題化しようとしても効果を持たない。

 

売国政党

テロとの戦いとは2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロを受けての国際連携である。同年10月29日、当時の小泉政権はテロ対策特別措置法を成立させた。

このことで自衛隊が米軍を支援することができたが、同法は2年間の時限立法である。

日本はロシア、朝鮮半島、中国と3方向からの圧力が集中する地政学上の特異点である。この圧力に対抗できるのは日米同盟が前提になっているということで、日米の連携は日本国民の生命・財産を守るためになければならない土台である。

2007年7月の参院選大敗によってねじれが生まれ、民主党がテロ対策特別措置法の延長を使って安倍総理の進退を揺さぶってきた。日米間の距離が空くのを最も喜ぶのはロシア、朝鮮半島、中国である。このことを最も知悉(ちしつ)し、何を持っても避けたかったのが外交の安倍である。こうしたことが民主党売国政党と呼ばれた所以である。

 

憲法

日本国憲法は戦後、G H Qによって作られた日本弱体化のための憲法である。この憲法の最大の問題は国際法で定められている自衛のための防衛が、憲法上で定義されてない。

憲法9条があるということで日本政府は、長きにわたって個別的自衛権については行使できるが、集団的自衛権は行使できないという政府解釈で誤魔化してきた側面がある。

いわゆる国なくして憲法なしといわれるが、国家がほろんでしまえば憲法は全く意味を成さない。

 

円高

鳩山由紀夫内閣財務大臣円高論者の藤井裕久氏である。海外が3〜4倍の通貨を刷って量的緩和を進めるのと真逆に、日本は1.4倍しか緩和しなかった。その結果、2011年10月31日に、1ドル=75円という記録的な円高になる。

東日本大震災の電力環境が悪化した状況であったことに加え、日本国内に生産拠点を持つ製造業者は苦境に陥った。そこで多くの製造業者が中国に生産拠点を移す。

 

アベノミクス

国際的に許された量的緩和を最大限に使って、円安へと誘導したのである。それがアベノミクスの真意である。

2012年12月26日の第二次安倍政権発足直前に向けて、日経平均株価は急上昇する。発足後に急速な円安が進み、年末に1ドル=105円となった。企業の決算は3月だか、実は民主党政権円高政策のままであれば、多くの企業が倒産する危機である。企業が保有している対外資産は円建てである。例えば10億ドルの海外資産を持っている企業があれば、1ドル=76円だったら760億円にしかならないが、1ドル=100円なら1000億円である。

アベノミクスによる円安誘導によって、企業業績は一気に回復することになった。

 

特定秘密保護法

2013年12月、安倍内閣特定秘密保護法を成立させた。

これによって1防衛2外交3安全脅威活動の防止4テロ活動防止の4分野で特段の秘匿の必要性のあるものを閣僚が指定。政務三役、国家公務員、都道府県警察職員に加え、国と契約した民事事業者も守秘義務が義務づけられた。煽ったり、そそのかしたり特定秘密情報を取ろうとした人も処罰対象となる。

これ以前は、日本はスパイ天国といわれていて大量のスパイがいるとされている。

この特定秘密保護法成立に向けて知る権利を阻害されたと訴えた人がいた。しかし、こうした人たちは4分野の国家機密を知って、一般市民がどんな得があるのかという点に答えてない。何より機密が日本を仮想敵国としている海外の国に知られたり、テロリストに知られる方がよほど危険である。

同法は外交・安全保障の司令塔となる国家安全保障会議(N S C)設置のための関連法である。日本は地政学上の要衝で、常に存在危機にさらされている。にもかかわらず重要事項及び重大緊急事態への対処を審議するための機関、制度さえ未整備のままだった。

特定秘密保護法ができたおかげで、同時期に、N S Cは無事に設立された。

 

安全保障関連法

2014年7月、第二次安倍政権は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。平和を維持するためには個別の国の暴走を抑え、パワーバランスを維持することが、国連安全保障システム下の国家防衛の基本である。

さらに2015年9月に安全保障関連法を成立させた。同法は日本と国際社会の平和、安全の確保のための平和安全法制整備法と、国際平和共同対処事態にあたって海外の軍隊などへの支援活動を規定する国際平和支援法の2法から成る。

集団的自衛権の行使容認と、同法で存立危機事態への対処がセットになったことで、中国への抑止力を大幅に高めることができるようになる。

集団的自衛権が行使される可能性が一番高い地域が台湾である。

 

台湾と与那国島を封鎖

2022年8月2日の深夜、米下院議長、ナンシー・ペロシ氏が訪台した。

ペロシ氏訪台同日の同年8月2日には、対抗措置を表明。さらに同月4日から、中国軍が台湾周辺での大規模な軍事演習を開始した。

この演習の海域には日本の排他的経済水域(E E Z)が含まれている。そして中国は、日本のE E Zにミサイルを着弾させている。最大の問題は与那国島海上封鎖されたことである。

与那国島は約1700人の住民がいて、250人の自衛隊員が駐留している。この与那国島封鎖は台湾だけでなく、日本の領土に及ぶ封鎖だということを突きつけた。

仮に台湾が中国の手に落ちた場合、台湾の軍港が中国の基地になる。台湾で有事があれば、沖縄は戦闘地域になってしまう。

 

T O C条約

T O C条約(バレルモ条約)を所管する国連薬物犯罪事務所(U N O D C)である。麻薬はテロ組織の資金源として非常に優れた商品である。原料の栽培、製品の製造も含めて麻薬そのものを取り締まることで、テロ組織の資金の入り口を規制しようというものである。

テロ等準備罪がなければ、T O C条約に加盟することができない。そこで安倍政権は改正組織的犯罪処罰法を成立させた。2017年7月11日に施行後、日本は国際連合本部に受託書を寄託(きたく)して正式に条約を締結。同年8月10日にバレルモ条約を発効した。

 

国民投票

憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、それを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

しかし肝心の国民投票が規定されなかった。そこで安倍総理は2007年の第一次安倍政権で日本国憲法の改正手続に関する法律を成立させた。

 

台湾

角福戦争の始まりで日本はアメリカに7年先んじて、日華断行を行うことになった。この総選挙の結果、日台間の正式な外交関係は断絶する。

日華断行後、大使館に代わるものとして台湾側は亜東関係協会、日本側は交流協会を設立し、事実上の大使館機能を維持してきた。しかし2017年、日本側は中国に配慮する形で国名を入れず交流協会としてきたが、同年に日本台湾交流協会に、台湾側も台湾日本関係協会に名称を変更した。

 

特定海域

領海は領土沿岸からの距離によって定められてきた。1945年にアメリカが海底油田の領海化する理由から12海里に設定。以降、沿岸12海里が世界標準なっていった。

領海では沿岸国の平和、秩序、安全を害しない無害通航権が保障されている。

無害通航は継続的かつ迅速でなければならず、潜水船は海面上を航行しその旗を掲げなければならない。一方、日本近海では戦略核を搭載したアメリカの戦略原潜が中国、北朝鮮、ロシアに対して核抑止の作戦航行を行う際に必ず通過しなければならないのが、宗谷海峡津軽海峡対馬海峡東水道及び西水道・大隅海峡である。

核武装した潜水艦が領海を通過する際にも旗を掲揚(けいよう)しながら海面上を航行しなければならない。しかも持たず、作らず、持ち込ませずの非核三原則の持ち込ませずに抵触してしまう。

そこで日本は宗谷海峡津軽海峡対馬海峡東水道及び西水道・大隅海峡については沿岸12海里を主張せず、沿岸3海里として公海とする特定海域とした。

この特定海域の隙をついているのが中国とロシアである。2021年10月下旬には、日本海で合同演習を行なった中国海軍とロシア海軍の戦艦合計10隻が日本を周回した。この時に通過したのが特定海域である。また、2022年3月14日にはロシア海軍駆逐艦1隻、潜水艦3隻など合計6隻が宗谷海峡を航行。また、同14日から15日にかけてロシア海軍の戦艦が津軽海峡を横断した。

 

下記書籍参照